BCPとは、企業が地震や感染症の世界的流行などの緊急事態に備えて、普段から『緊急時にどの事業を継続させるのか?』や、『そのために何を準備し、どのように継続するのか?』などを検討し、企業にとって中核となる事業を継続するための対策などを取りまとめた計画のことです。
BCPを策定しておくことで、流行のまん延期などにおいても、感染対策の実施により従業員への感染拡大を防止したり、企業の存続にとって中核となる事業を継続しやすくなることが期待されます。
しかしながら、帝国データバンク社の調査によると、中小企業で実際にBCP策定を行っているのは13.6%に留まっており、なかなか浸透していない実態が分かっております。
全国的に感染拡大も継続しており、十分に検討する時間も残されていない中、中小企業においては詳細なBCPを策定しないことも選択肢の一つなのかもしれません。
筆者らは、2009年の新型インフルエンザ流行後、厚生労働科研費研究班(『職域における新型インフルエンザ対策の定着促進に関する研究』代表:高橋謙)において大小様々な企業における感染対策やBCPのレビューを行いました。
その結果、中小企業においては大企業で準備しているような詳細なBCPがなくても、経営者のリーダーシップの下で臨機応変な対応が取りうることが確認できました。
ただし、『最終意思決定者』、『外部(例:病原性の情報)・内部(例:社内発症数)情報の収集体制』、『感染拡大防止策』、『事業継続に及ぼす影響の評価に関する準備』の4つは、感染症流行への対応を行う上で、企業規模を問わず、最低限必要なものと言えます。
今後の更なる感染拡大を見据えて、少なくともこの4つは各企業で準備を進めておきたいところです。
これらの詳細は『災害産業保健(労働調査会)』という書籍の中で詳細を述べておりますので、関心のある方はぜひご参照ください。
感染症BCPの策定を検討している企業におきましては、自力でゼロから作成することは困難を伴うことが予想されますので、産業医等の専門家によるサポートを受けることをお勧めします。
なお、東京商工会議所の『感染症対応力向上プロジェクト』の中でも、無償でBCP作成のサポートを行っておりますので、ぜひ問い合わせてみてください。
<参考文献>
1)帝国データバンク. 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020年)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200606.pdf
2)今井鉄平ら. 新型インフルエンザ等流行時における産業保健支援. 災害産業保健入門. 企業通信社.
2016年7月発行